腎臓機能の加齢性変化(腎臓も歳をとる!)

これも昔はあまり意識されてきませんでしたが、近年の長寿化により、腎臓の加齢性変化についても考えていく必要性が日常診療で起こっています。極端な例かもしれませんが、40歳と100歳の慢性腎不全の患者さんが腎代替療法を行わないと生命を維持できない状況になったとして考えてみます。40歳の患者さんについては基本的には腎代替療法は必須であると考えられ、何らかの腎代替療法をするように説得するようにしています。一方の100歳の患者さんについては、ご本人の意志やご家族のお気持ちなどを考慮して一緒に話し合う必要があると考えています。腎代替療法を行わないことも正解でありますし、行うことも正解でありますという立場をとっています。年齢によってすべてを区分けすることはできませんが、どの患者さんにもしっかりと(腎代替療法を行っていくことでの利点欠点、行わないことの不利益)をすべてご理解した上で選んでいただく必要があると考えています。

 

前置きが長くなりましたが、

腎臓の機能は20~30歳以降に、10年ごとに約8%程度低下していく傾向にあることが分かっています。

上の直線のグラフは年齢と腎機能の関係を近似直線にしたものです(Berg UB,Nephrol Dial Transplant 21:2577-2582, 2006 から引用)

各データにばらつきはあるものの、全体としては年齢とともに腎機能が悪化していく傾向にあるところは一致しています。

ちなみに左側のグラフは男性、右側のグラフは女性です。

男性は統計的にも有意に悪化していく傾向にありましたが女性では統計的に有意ではなく、腎機能は横ばいという結果でした。

性差については後日再度別に考えていきたいと思います。


 

尿細管も加齢に従い、機能が低下すると考えられています。

レニン産生(活性)、アルドステロン濃度が低下、Na排泄能力も低下することが指摘されています。加齢にて尿の希釈力も低下、高齢者によくある夜間の頻尿もこのことが一部関係していると考えられています。

研修医のときに高齢者ではサイアザイドの使用で低Na血症に注意するように言われたことを思い出しますが、こういったNaの排泄や体液の排泄能力の変化などが関係していると後から納得しました。かと思えば、体調不良にて簡単に脱水になり、高Na血症になることさえあります。

 

少し話はそれましたが、腎臓は加齢性に悪化していく傾向(特に男性)があることが分かっている

→すなわち、現在はそれほど腎臓が悪くなくても、そこから加齢性の悪化も加わるため、生きている間に「将来透析になりますよ」とか「生きている間には透析が必要になっていますよ」ということを言われてしまう可能性が出てくるわけです。

 

おまけに、加齢性の悪化にさらにその他、高血圧や糖尿病の要因が加わると、さらにまずいことになります。

 

なので「腎臓の値は今はいいけれども。」と言われたことがある方は注意が必要です。

 

糖尿病や高血圧などの生活習慣病をお持ちの方は、血糖を下げたり、血圧を下げたりするだけではなく、ほかにも気を付けないといけないことがありますので、やはりかかりつけの先生など、その患者さんにとって「監督」のような存在がますます重要になると思っています。

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