シャントとは?

 

血液透析の準備をしましょうと言われたときに必要な手術がシャントの手術です。

普段、腎臓が正常に機能している方は24時間×1週間=168時間かけて1週間分の体から出たゴミや過剰な水分を捨てています。

血液透析の患者さんでは168時間かけてゆっくり行っている作業を1週間に3~4時間×3日(患者さんによっては3~4時間の週2回ということもあります)=9~12時間で行わないといけません。体から約5リットルすべての血液をいったん出して洗浄できればいいのですが、そういうわけにもいきません。

 

では血液透析ではどうしているのでしょうか?

1分間に200ml~300ml(透析導入した初期は100〜150ml)の血液を体から抜き取り、次から次へと血液をきれいに+余計な水分を取り除いていっています。

 

要するに「沢山勢いよく血液を血管から取り出して、勢いよく血管に返す」ということをしています。

 

そうなると必要なのは、たくさん血液が流れている血管を探さなくてはいけません。

 

いつも外来で行っている採血を思い出してください。採血は腕の静脈から取っていて、採取する血液量は実は5〜10回行ってようやくヤクルト1本分(65ml)になるのですが、1回の採血でも10秒とか20秒とかかかります。普通の血管では1分間にヤクルト1本分も血液をとれないのです。

 

では、そのような血管は通常の状態では、どこにあるのでしょうか?

実は、どくどく脈打つ動脈か首にある太い静脈しかありません。しかし、週3回の透析に、動脈や太い静脈に太い針を刺すことは、患者さんにとっても痛みなどの苦痛を伴いますし、止血も難しかったりします。

 

そこで考えられたのが、腕の手首近くの動脈(太さは2mm程度)と静脈を5mm程度の穴をあけてつなぐ、シャントと呼ばれるものです。

 

シャントの手術を行うと、どくどくした動脈の一部を静脈に直接流すことで、静脈に沢山の血液が流れている状態を作り出します。

動脈というのは体にとって重要な血管で、圧力も非常に高いので、をしても傷つきにくいように体の表面から少し深い位置を走っています。

一方で静脈は採血に使われる血管で、誰が見ても分かる位置を走っています。

手術によって深い動脈から浅い静脈に血液を流すことで、透析するときに簡単に穿刺ができ、血液を取ることができます。

 

シャントの他にも動脈表在化といって深い位置にある動脈を体の表面に持ち上げてきて刺しやすくする手術もあります。また、人工血管を用いた手術もあります。どちらもシャントと同じく、利点や欠点もあります(後日お話します)。

 

シャントと透析患者さんというのは切っても切り離せないものですが、シャントが狭くなったり、シャントが血栓で詰まったりすることもあり、シャントのケアやメンテナンスは欠かせません。よく患者さんから、PTA(狭くなったシャントを風船で膨らませる治療)をするときに、透析を始めた当初からシャントもメンテナンスがいることなんて誰も教えてくれなかったと言われることがあります。

 

シャントを永く保つには?とかシャントの問題点、シャントのメンテナンスの治療など千葉病院で私が行っている取り組みについてはまた詳しく書いていこうかと思います。

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