シャントを作れる血管選択について

腎臓内科や透析を専門としている医師として、シャント作成にかかわるときに、事前に超音波エコーにてシャントが作れる血管がどこ(動脈)とどこ(静脈)にあるかということを評価することが多いかと思います。

 

基本的には動脈1.5mm、静脈は駆血時に2.0mmの太さが必要と考えています。

もちろん、動脈の石灰化の状態や静脈が中枢で詰まっていたりすることもあるのでそういった時は例外です。

上記の太さを下回る場合は術後に流れなくなったり、翌日に詰まっている確率が高くなると思われます。さらに細い血管につなぐことは可能ですが、それがまた後日血流がしっかり流れ、機能的に使えるシャントになるかということは別問題になってしまいます。

 

血管が細いのに腕の先(タバチエ)→手首→前腕の中央部と2~3回も手術したのに流れなかったという患者さんも時々目にします。そういった方の大半は術前にしっかりと評価することにより、手術の負担を減らせる可能性があります。

 

手術を行っていて、よく遭遇すると思われる困った状況とその対処法について考えてみたいと思います

・静脈は太くて立派だけど、動脈が細い

・動脈は吻合想定部では1.5mmあるが、切開にてフローが弱い気がする

・石灰化が強く吻合できるかどうか悩む

・動脈と静脈を吻合した後に、少し捻じれてしまい、流れが思ったよりも悪くなってしまった

 


<対処法>

動脈の流れの問題での困ったことの対処法

①動脈のフローを事前に評価する

エコーにて動脈のフローを事前に評価することで、しっかり流れるかを予想する

ただ、この方法を信頼しすぎてしまうと、初回作成部位が肘部など中枢になってしまう割合が増加してしまう懸念がある。

②血栓除去用フォガティカテーテルにて動脈を拡張する

動脈を拡張することは否定的な意見を持たれる先生もいることは事実である。しかしながら、手術時に動脈拡張することで何か弊害が増えるという根拠も出ていない。

動脈を拡張することで、事前評価にて血流が乏しいと判定された症例でも、十分末梢にてシャント作成を行うことが可能である。

初回作成部位が中枢になってしまうと、今後閉塞などのトラブルにて再建する場合に手術できる部位がすくなくなってしまうのは大きな問題である。人工血管に出来るだけしないためにも、動脈拡張するということは理にかなったことである。

私の勤める病院では出来るだけ末梢に作成するという意図をもって流れが悪い症例に対して動脈の拡張を行っている。またそれによって何か弊害が生じた症例は1例も経験しておらず、上記のように今後の長い透析人生に備えて血管を温存するためにも標準的な治療ととらえてよいかと考えている。

 

 

・石灰化が強く吻合できるか不安

こればかりはどれくらいの石灰化によって異なってくるため、明確な基準は存在しない。

ただ、石灰化が強い症例でも吻合を丁寧に行えばしっかりとしたシャントに育つこともまた事実である。データはないものの筆者の経験では石灰化がある場合は動脈の太さは最低2~2.5mmは必要と考えている。

場合によってはフォガティーカテーテルにてマイルドに拡張することも選択肢となる。またその場合には血栓予防のため、経験的にヘパリン2000単位程度を術後に投与することが望ましいと考えている(術中にもヘパリン生食を投与している)。

 

 

・動脈と静脈を吻合したあとに少し捻じれてしまい、思ったよりも血流が流れない

このことに関しては別の項目で説明したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です