腹膜透析液の進歩

腹膜透析は1976年にMoncrief と Popovich により開発されました。当初は硝子製のビンに入った液を使用したものものしいものであったそうです(持ち歩くことはできなかったそうです)。その後、1978年にソフトバックといって今のやわらかい点滴バックのようなものが開発されました。日本では1981年から治験が始まり導入されました。

 

当初の腹膜透析液はとりあえず体の老廃物を排泄する機能と水分を捨てるということだけに着目されており、腹膜損傷劣化についてはそのようなことがあること自体に気が付かれていませんでした。

 

1990年代に入り、長期間のPDによる腹膜障害・劣化が高頻度に出現するようになりました(臨床的に除水不全によりPD離脱が増加しました)。そして、被嚢性腹膜硬化症(Encapsulating peritoneal sclerosis; EPS)という重篤な合併症を引き起こすようになりました。

従来の酸性の高ブドウ糖分解産物(GDP)透析液は生体適合性が不良でしたが、2000年に入ると中性・低GDP腹膜透析が導入されるようになり、腹膜障害の出現頻度は激減し、その効果が出てきています。

 

腹膜劣化の詳細に関してはまた後日まとめてみたいと思います。

GDPだけが原因かどうかについてはまだ良くわかっておらず、乳酸やpH、浸透圧などが複合的に関与している可能性が考えられています。

 

 

私の勤めている病院では2018年4月から腹膜透析を再開しましたが、通常の腹膜透析液は中性・低GDP液を使用しています。

 

除水メインのイコデキストリン液も使用可能です。イコデキストリン液は私の病院では酸性液で、中性液ではないところは今後どうなっていくかは分かりませんが、イコデキストリン液のpHは腹膜劣化の主たる原因にはならないと言われていたりもして、見解は一致していません。

必ずしも中性であればOKというわけではなく、酸性だけであれば腹膜劣化の原因にはならないのではないかとするデータもあります。

会社によっては中性化したイコデキストリン液を利用可能です。

 

また、今後、そのようなデータが蓄積されていけば、液の性質も変わっていくと考えています。

 

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