注意!外来でよく見かける薬による腎不全

 

千葉の病院で外来を行っていて意外と多いのが薬による腎障害です。ではどういったものが多いか見てみましょう。

ベスト3

・フロセミド(利尿薬:浮腫みをとる薬)による

・ビタミンD(整形外科などで骨粗鬆症に出される薬)による高カルシウム血症による

・ロキソプロフェンなど(腰痛や頭痛などの痛み止め)による

の3つが多い印象です。

 

他にも薬による腎障害であるのが

・抗がん剤(特にシスプラチン)による

・最近注目しているのが、昨日、2018年のノーベル賞も受賞することとなった免疫チェックポイント阻害薬です。

・動脈硬化が強い方の降圧剤(血圧を下げすぎ)による

ものなどがあります。

 

薬剤性(薬による)腎障害は他にも挙げればきりがないくらい可能性がある薬剤は多いですが、実際に沢山の薬を内服されている場合はどれが原因なのか分からないこともあります。

 

今回は、特にベスト3についてみていきたいと思います。

 


  • フロセミドなどの利尿薬(いわゆる浮腫みをとる薬)により腎障害

高齢の方に比較的多くみられます。

まずはよく見られるシチュエーションを提示します。

78歳男性、尿蛋白や尿潜血はといった尿所見の異常は認めませんが、Creが半年でCre1.5→2.2に上がってきている。降圧薬は飲んでおらず、血圧も収縮期120程度で安定しています。薬はコレステロールの薬、胃薬、血液サラサラの薬(なんで飲んでいるかはさておき)、そしてフロセミド40mg(利尿薬)を投与されています。

身体的な所見としては、皮膚は乾燥、浮腫も全くありません。

お話を聞くと、以前に両足がむくんだことがあり、かかりつけの先生に相談したところ、むくみをとる薬を処方されたとのこと。それ以来数年間内服している。

 

上記は完全な再現ではありませんが、同じような方に遭遇します。

尿検査、血液検査、レントゲン検査などを行い、場合によっては心臓の超音波エコーを行います。結果的には利尿薬が多すぎた(もしくは不要であった)、ということになります。

 

まず、「両下肢のむくみ」ですが、ご高齢の方が増えてきている折、腎臓や心臓が悪くなくてもむくんでしまうことがあります。そのむくみに対して、利尿薬を使いますと、腎臓が悪くなる場合があります。

 

〇心臓、腎臓が悪くないのにむくむ〇

・両足の筋力低下

・低栄養(血液のアルブミンという蛋白質が減る)により、むくむ

・リンパ液の巡りが悪くなりむくむ

 

他にも原因は多々ありますが、むくみ取る薬(利尿薬)を飲む前に、こういった原因がないかどうかしっかりとお医者さんと相談する必要があると思います。

 


  • ビタミンD(骨粗鬆症で整形外科などでよく処方される)による腎障害

特に女性で多い印象です(閉経後、多くの女性が骨粗鬆症となる可能性が高いからです)。

骨粗鬆症の入り口で気軽に多く処方されるのが、ビタミンDというお薬です。

 

ビタミンDにはカルシウムを上昇させる働きがあります。カルシウムが高すぎると腎臓の尿細管というところに影響が及び、腎機能が悪化してしまう可能性があります。

ビタミンDを飲んでいる方は少なくとも半年~1年に1回は血液検査をしてカルシウム濃度を測定する必要があるのではないかと思います。

しかしながら、安くて容易に処方できる薬故、あまり高カルシウム血症の副作用はチェックされていないことがあります。

 

しかしながら、慢性腎不全でCre4とか5など、比較的進行した患者さんではPTHとよばれるホルモンを調整するためにビタミンDを内服されている方もおりますので、そういった方々については、処方している医師がしっかりチェックしているので心配ありません。

 

なお、アルブミンが低い方(具体的には4.0g/dl未満の方)は血液検査で出ているカルシウムの値から補正する必要がありますので注意が必要です。

 

~補正方法~

補正Ca=検査上のCaの値+(4.0-血液のアルブミンの値)

となります。

 


  • ロキソプロフェン(頭痛や腰痛などの痛み止め)による腎障害

比較的病院でも良く使われていて、数年前に市販でも買えるようになったロキソプロフェンをご存知の方がはいらっしゃるかと思います。NSAIDsと呼ばれていて、ほかにもジクロフェナク(ロキソプロフェンよりも鎮痛効果高い)などがあります。

 

よく「痛み止めは胃を荒らすから気を付けてね」と聞いたことがあるかと思いますが、こういった薬は胃だけではなく、長期内服により腎臓も悪くする可能性があります。

 

NSIADsは腎細動脈にあるCOX-2という物質を阻害してしますためえ、糸球体血流を減少させます。その後、近位尿細管から分泌されてしまうため、高容量使用している場合には薬剤により直接尿細管を障害してしまいます。

 

KDIGO(Kidney disease improving global outcomes)のガイドラインではeGFRが30未満やRA系阻害薬(ACE阻害薬やARB)を内服している患者さんでのNSIADsの使用を避けるよう提案しています。eGFRが60を超えていても継続的に使用することは避けた方がよいとしています。

 

かわりに良く用いられているのがアセトアミノフェンです。こちらの薬剤は基本的には安全ではないかとされていますが、腎障害の報告もあり、やはり定期的な検査フォローが必要と考えられます。

 

他の方法はないでしょうか?

トラムセットを用いたり、慢性疼痛に対して、麻薬(フェンタニルの貼付剤)が使用可能であり、そういったものを使うのも良いのではないかと考えられます。基本的には湿布で対応できれば一番よいかと考えます。

 

私の勤めている千葉病院では整形外科医もおり、腎不全をお持ちの患者さんもたくさん診て頂いているので、いろいろと相互に相談しながら診療にあたることも可能です。疑問点などがあればご相談ください。

杉原

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