膜性腎症(糖尿病性腎症合併)~DMでもネフローゼなら要注意~

62歳男性:ネフローゼ症候群(糖尿病+高血圧あり)

10年前より糖尿病の指摘あり、3年前より糖尿病に対してDPP4阻害薬が開始されていた。経過中特に糖尿病コントロールが悪化することはなかったとのことであった。蛋白尿が多い(ネフローゼレベル)ということを指摘されたため当院紹介受診となった。

眼科:糖尿病網膜症A2/A2

既往症:高血圧、糖尿病

下肢浮腫なし

<尿検査所見>

蛋白尿3+ ,定量647mg/dl ,潜血反応± ,尿糖± ,尿沈渣赤血球5-9,卵円形脂肪体+,上皮円柱+,硝子円柱+

<血液所見>

Alb 2.1g/dl

SI:0.23  蓄尿蛋白量5.3g/日

 

<腎病理>

  • まずはPAS染色からです

びまん性にメサンギウムの増生を認めています。

もう一枚です。

 

  • 次にPAMです

分かりにくいのですが、末梢係蹄はスパイク形成を認めています。基底膜は厚く見られ、一部二重化も認めます。

 

  • 電子顕微鏡所見です

基底膜にelectron denseな沈着物を認めています。

 

上記所見から糖尿病性腎症+膜性腎症StageⅢと診断しました。

 

動脈硬化も強く、血圧コントロールもコツがいりそうな印象です。

 

古典的な糖尿病性腎症を疑っていても、それによるネフローゼと断定せず、疑ったら腎生検が良いのではないかと考えております。もちろん腎生検に対するハードルは病院によって異なると思います。

昔はエコーなしで腎生検を行っていた時代もあるくらいですので、現代はエコー下と恵まれていて、重大な出血を起こすことも少ないので、少しでも疑わしい場合は年齢も考慮しながら積極的に行った方がよいかと考えています。

また、腎臓専門施設の受診の必要性でも触れておりますが、DKDというタームを今後使っていく必要があるため、より一層、糖尿病患者さんでの腎生検の必要性についてのアセスメントがより厳密になっていくと考えています。

 

ちなみにこの方はDMがあるためPSL少量から治療開始し、しばらくしてCyAを上乗せし、現在はPSLオフ+CyA継続にて尿蛋白は極少量(DM腎症からくるものと推定)になっています。

DMに対してはDPP4阻害薬+SGLT2阻害薬を使用しています。SGLT2阻害薬についてはまた別項目でご紹介いたします。

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