「健診で今まで順調だったのに、今年の健診で尿潜血が指摘されました。見た目は普通の尿なのに」という方はいませんか?(見た目が明らかに血液!という血尿の場合は泌尿器科の受診が必要ですが、当方でも一から調べています)
原因としては大きく2つに分けられます
- 尿の通り道である尿管や膀胱などに問題がある場合
- 血液をろ過する腎臓自体に問題がある場合
1.尿の通り道に問題がある場合
尿の通り道である腎盂や尿管に結石がある場合、血尿が出ることがあります。
上記絵の尿管、膀胱、尿道に問題がある場合は他にもあります。それぞれの部位に腫瘍が出来た場合も尿潜血が陽性になることがあります。
私の診療では、まずは尿の赤血球に変形があるかどうかを見るようにしています。変形赤血球が出ていれば腎臓自体の問題から血尿となっている可能性が高いと考えられます。
(ただ、変形赤血球がないからといって完全に腎臓疾患を否定できるわけではありません。)
10〜30代の方はCT検査よりもまず超音波検査を施行するようにしています。理由は若い世代には結石や腫瘍の確率が低いこと、被爆の問題があること、腎生検になる可能性が高いことからそのようにしています。
それ以降の患者様にはCT検査を併用し、腎結石や尿路結石、CTでわかる範囲の腫瘍性病変がないかどうかのチェックを行っています。また、同時に尿細胞診といって、尿の通り道に腫瘍の細胞がないかどうかのチェックを行っています。
細胞診は特異性が高い(腫瘍の可能性が高いと判定された場合は膀胱癌や尿管癌の可能性が高い)ですが、陽性にならない場合も多々あります。
肉眼的に血尿である(見た目に血液のような色)場合、尿細胞診で腫瘍の可能性が低いという判定であっても、後々、膀胱癌などの診断となる場合も少なからずあり(5~10%程度といわれております)、陰性であったとしても泌尿器科にご紹介する場合があります。
2.腎臓自体に問題がある場合
尿の通り道に問題ない場合は腎生検の適応となります。ただ、患者様のご年齢も十分考慮します。例えば75歳で潜血陽性、尿蛋白がなく、腎機能も年齢相応で尿路の腫瘍も否定できれば経過観察となります。一方で30歳で潜血陽性、変形赤血球も少数、腎機能も悪化していない場合は何度か尿の検査をして経過観察を行った上で腎生検行うかの相談をする場合があります(ナットクラッカー症候群など腎血管異常でも血尿が起こる場合がありますが、稀な病態です)。
一般的に腎生検を行わない場合で、長い間持続する血尿で考えうる診断に、遺伝的に基底膜が菲薄化傾向の方もおられ、良性家族性血尿と呼ばれているものがあります。
家族性血尿は一般的に予後良好な疾患と考えられておりましたが、経過を診ていると長い長い経過で腎機能障害が出てくるものや蛋白尿が出現してくるものなども存在します。
腎生検されていない状態でも安易に家族性血尿と診断してしまうのも避けた方がよいと考えられ、最低でも6か月~12か月おきのフォローは必要であると考えています。
とりわけ、昨今の長寿化により、過去に基底膜菲薄化傾向があるとされた患者さんでも高齢になってきたころに、その他のリスクがないにも関わらず、障害がじわじわ進んでいるという場合を経験します。
家族性の血尿と診断された方においても、定期的なフォローや年1回の健診は受けることをお勧めしております。
70歳前半の方で初めて潜血と僅かな尿蛋白にて紹介され、腎生検にてIgA腎症と診断。Creの推移や尿蛋白の推移から少量のステロイドにて潜血が改善した例もあります。
ご高齢の方においてもガイドライン上、腎生検は施行しなくてよいとはなっておらず、臨床的に必要があれば必要に応じて行うとされています。
その他として、進行が速い腎障害を伴う場合や発熱や呼吸器症状を伴う場合は急いで診断した方がよいため、速やかな受診が必要と考えられます。
尿蛋白を合併している尿潜血の場合は腎生検が必要な場合がほとんどであると考えられます。
ご年齢と検査所見等から腎生検を行った方がよいかどうか判断が分かれる方がおられるのも事実ですが、一緒になって納得いくまで考えて結論を出していくことが重要ではないかと考えています。
コメントを残す