腎臓と腸内細菌に関わりについては日本でも研究が進んでいます。腸内の細菌は消化・分解ができない食物繊維などを嫌気発酵し、さまざまな物質に変化させています。
分かってきたことは、その分解産物が健康に有用なものと、尿毒症物質として扱われているもの両方が出来てしまうということでした。
慢性腎不全の病態進行に腸内細菌がかかわっている可能性も指摘されており、腸と腎臓がお互いに影響しあうことが分かってきました。
一般的に善玉菌はLactobacillus, Bifidobacteria, Prevotella などを指します。
慢性腎不全の患者さんでは、Brachybacterium,CatenibacteriumやEnterobacteriaceaeといった菌が増加していることが報告されています。
上図はChronic kidney disease alters intestinal microbial flora. Vaziri ND,et al. Kidney Int. 2013 Feb;83(2):308-15.より引用。
CTLがコントロール群(健常者)の腸内細菌の種類、aの右側はeGFR15以下の末期腎不全、bの右側は慢性腎不全患者群です。
aの末期腎不全においては、健常者と比べて細菌の属は似通っていたが、それぞれの細菌量は異なっていたとのことされています。
bについては慢性腎不全群で細菌叢の種類が異なっていることがわかります
上図は一部の属を取り出して、慢性腎不全と健常者の群で分けたものですが、明らかに明確な差を見出せます。
腎機能が低下し、尿毒症物質が体に溜まった状態では、このようにDysbiosisといって腸内細菌叢の状態が悪化していると考えられています。
また、腸内細菌叢の悪化を通して、細胞間のtight junction(細胞同士は隣通しがくっついていないと間が空いてしまいます。そのため横の細胞同士をくっつける紐のようなタンパク質がありお互いに支えあっています)の発現が低下し、細胞間隙が広がってしまうことにより、悪玉菌が細胞の隙間を通って間質に入り込むと考えられています。そうすることで、悪玉菌と体の免疫細胞が触れ、微小環境での炎症が発生し、そして血管を通して全身をめぐっていくことにより、全身病として腎臓にも悪い影響を与えると推定されています。腎臓だけではなく、その他の臓器への影響も考えられるかもしれません。
上図はAnders HJ, et al ;2013 Kidney International より引用。
③へ続きます。
大変興味深く拝見しました。
また、長年腎臓病&透析と付き合ってきていますが、勉強不足を痛感しました。
長期透析による、手根管症候群の事なども勉強させていただけると大変嬉しく思います。
忙しいと思いますが、医者の不養生にならないよう、お身体には充分に気を付けながら、
「腸の菌と腎臓3」もよろしくお願いいたします!
そして、自分の娘、息子だったら...という思いで、若い患者!?のことも、よろしくお願い致します。
見ていただき本当にありがとうございます。透析になっても腸内環境は整えるべきと考えています。自分よりも若い患者さんが透析になってしまわれたことも経験しており、やはりより胸が痛くなります。また随時更新してまいりますので末永くよろしくお願いいたします。