短編:未来の腎臓(透析の代わりになるか?)

未来の治療の期待

いま、腎代替療法の新しい治療としては

①透析器の小型化(ポータブルタイプ)

②植込み型ディバイス(人工腎臓)の開発

③異種動物の腎臓を移植する

④再生医療にて腎臓を再生する

が研究されています。

①透析器の小型化

アメリカ(米国)において、ポータブルタイプの身に着けられる透析器が臨床試験に入っています。直近に1day(24時間)装着の臨床試験をクリアしたようです。次は1週間装着の臨床試験ということで、未来の治療としては恐らくは今一番近いところにあるのではないかと思われます。バスキュラーアクセスとの安全な接続が問題となる可能性があるということが議論されているようです。

実現すれば透析の通院頻度が週1回程度に抑えられたりする可能性が考えられています。

②植え込み型ディバイス(人工腎臓)

植込み型ディバイスは分かっているものとしては米国と日本で研究されています。日本のものは、マイクロ流路とナノ多孔質膜を組み合わせたもの、米国のものは膜だけではなく、腎臓の細胞を培養してマイクロチップの上に並べるというハイブリット型が検討されています。

問題点は

・血液凝固を回路内でどうコントロールするか(機器の中で血液が固まるのを防ぐ必要がある)

・人工血管を使用するため、狭窄が問題となる

・膜の交換(膜も劣化する)をどうするか

等が考えられるかと思います。

いずれも202〇年までに実用化を目指しているということで、こちらについてももしかするとそう遠くない未来に利用可能になるかもしれません。

③異種動物の腎臓を移植

もう少し未来の治療としては、ブタなどの異動物からの腎臓を移植することも考えられています。これについては、免疫抑制の強化、移植後の炎症を抑えること、ブタがもともと持っているウイルスを排除するといったことが課題になっていて、それぞれ研究が進んできています。豚レトロウイルスに関しては近年、除去が可能とする研究も発表されています。非常に難しいのが炎症を抑えることと免疫抑制です。人から人への腎臓移植とは違った難しさがありますが、世界的にも盛んに研究されています。

④再生医療にて腎臓を作る

そして日本が一番研究が進歩している分野で、再生医療にて腎臓を再生するという分野です。日本人であれば再生医療の分野でノーベル賞も出ているため一番期待したい治療になるかと思います。

自分自身の細胞から作られるので、腎臓を移植しても免疫抑制薬がいらないというメリットがあります。

ただ、腎臓の尿を作る組織と、その作られた尿を集める組織という作られるもとになる細胞が異なる組織(「発生:生まれてくる元」が違う)の集合体を作製することが難しく、現在は腎臓の尿を作る組織の作製までは目途が立っている状況です。国内でも幾通りかの方法が検討されており、今後の日本の研究に期待したいところだと考えています。

まとめ

ご紹介した内容は表面的なものではありますが、最先端の研究者ではない、実際に患者さんを診療している医師として大切なことは、最新の治療の進達状況をある程度知っておくことではないかと考えています。

最新の治療がどこまで進んでいるかを認識しておけば、近い将来、そういった治療が利用可能になる時代が近づいたときに、患者さんの腎代替療法の治療選択が変わる可能性もあるのではないかと思います。

将来、再生医療が完成したときには、おそらく夫婦間などの生体腎移植はなくなっているでしょう。

極端な仮定の例(現実ではありません)を出すと、「あと2年後に再生医療が完成する可能性がある」としたら、夫婦間の移植はどこまで積極的に考えるでしょうか?。

重要なことは「ご自身が納得いく医療を受けられる」ことにあると考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です