NSAIDs(痛み止め)の意外と知られていない腎障害(医療者向け)

ロキソプロフェン(ロキソニン)などの痛み止めであるNSAIDsによる腎障害は間質性腎炎だけではありません。

間質性腎炎は最も多い副作用でありますが、他にも起こる可能性があることを是非この機会に知っておいていただければと思います。

また、ロキソプロフェンは市販薬として購入も出来るため、服用されている方も注意が必要であるかもしれません。

腎障害のパターンとしては以下があります。

 NSAIDsの腎障害パターン

①間質性腎炎

②急性尿細管壊死

③(微小変化型が多い)ネフローゼ症候群

いかがでしょうか?

①については今回は説明を省略致します。

②の急性尿細管壊死は分かるとしても、③の微小変化型ネフローゼは意外だったのではないでしょうか?

②急性尿細管壊死

何らかの状況にて腎血流が低下している場合に、COX1阻害薬であるNSAIDsを投与されると、プロスタグランジンが抑制され、血管収縮が起き、虚血が起こると考えられています。

状況としては極度の脱水などがある場合にNSAIDsが投与され、急激に無尿に陥るというような場面が想定されるかと思います。

これを書きながら、私が初期研修医のころ、同期がフルマラソンを走る直前に、途中で膝が痛くなるのを防ぐために、「ロキソニンを2錠内服して走ると膝が痛くならなくて完走できていいよ!」と言っていたのを思い出しました。当時でも結構腎臓が危なそうな方法だなと思った記憶があります。

決して、脱水になるような場面で、痛み止めを内服して無理をしてはいけないと強く思います。

速やかに薬剤中止と適切な補液が必要と考えっれます。また、アンギオテンシンⅡが亢進の有無と検査と対応が必要になる可能性があります。

③ネフローゼ症候群

NSAIDsによるネフローゼは基本的には微小変化型(MCNS)の報告があります。

報告自体は少なく、その原因メカニズムもはっきりしていませんが、T cell mediatedのサイトカインが関係している可能性があり、IL2,4,5,9,10,13を含んだ、ヘルパーT細胞に関連するサイトカインの上昇を認めていたとする報告もあります。T細胞活性化を介して、podocyteの障害を引き起こすものと考えられています。

血液サラサラにするアスピリンもNSAIDsですが、高容量のアスピリンでのネフローゼの報告はあります。心臓や脳の血管の病気のために血液サラサラにするための量で内服している方。具体的には1日81mg程度。高容量とは1日300mg以上など、痛み止めで使用する量になります。

低用量での報告は今のところないようですので、循環器内科(心臓内科)などで処方されている方についてはこの心配はないようです。

まとめ

意外な副作用があったかと思います。

ただ、稀な副作用になりますので、頭の片隅にこんなのあったなくらいでよいのではないかと思います。

他にもメジャーな薬剤での腎障害には、PPI(胃薬:プロトンポンプ阻害薬)による慢性間質性腎炎もあります後日別にまとめていきたいと思います。

こういった薬剤性の腎障害は頻度は多い訳ではなく、後述するPPIについても、PPIを中止することのデメリット(胃潰瘍等)も充分あるため、シマウマ的な副作用の可能性があることを知ったからといって、エヘン!と中止もしくはH2ブロッカーに変更しては痛い目に合う可能性もあります。

充分にメリットデメリットを考えて行動することが必要かと考えられます。

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