抗がん剤による腎障害のパターン(医療者向け)

癌治療の進歩により、以前に増して色々な種類の抗がん剤が適応病名が拡大され、使用されるようになり、抗がん剤による腎障害も増えてきている印象があります。

より副作用が少ないor効果の高い抗がん剤が開発され、高齢の方でも使う場面も増えてきており、もともと腎不全があり、抗がん剤を減量しなくてはならなかったり、抗がん剤を使ったことで腎不全が進行したり、状況は様々であると思います。やはり使用頻度が増えてくると、それに伴い副作用も増加していくのも仕方のないことなのかもしれません。

薬剤性腎障害は頻度の多い順番に

①抗生物質

②NSAIDs

③抗がん剤

となっており、抗がん剤の腎障害約15%と意外と多いということが分かるかと思います。

抗がん剤による腎障害のパターンを示しておきます

①腎血管病変

②糸球体病変

③尿細管間質性病変

の3つに分けると

①腎血管病変

●血栓性微小血管症●
Gemcitabine, Bevacizumab, CDDP, Interferon

●毛細血管漏出症候群●

Interleukin

②糸球体病変

●微小変化型ネフローゼ

Pemetrexed, Interferon

●巣状糸球体硬化症(FSGS)

Pemetrexed, ゾレドロン酸、Interferon

③尿細管間質性病変

●急性尿細管壊死

ゾレドロン酸、Imatinib, パミドロン酸, ペントスタチン,Interferon, 白金製剤

●尿細管炎:Renal Fanconi syndrome

CDDP、 Ifosfamide , Azacitidine, Imatinib, パミドロン酸

●腎性尿崩症

CDDP, Ifosfamide ,Pemetrexed

●SIADH

多くの薬剤がSIADH傾向となる可能性あり。

●急性間質性腎炎

Sunitinib, Sorafenib

●尿細管閉塞性腎障害

メトトレキセート

●低マグネシウム血症

CDDPなど

これに加えて、昨今では抗PD1阻害薬による蛋白尿やネフローゼ症候群の症例も散見されてきており、抗がん剤による腎障害、副作用の数は益々増加していくものと考えています。

また、分子標的薬の登場により透析患者さんでも使用できる抗がん剤というのも増加しています。

「透析をしているから癌の治療の受診や調べること自体を諦める」

ということが起こらないように、

透析を診療しているものとしてもそういった薬の知識もある程度頭に入れておきたいものです。

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