先ず、インクリメンタルPDより始めよ(医療者向け)①前置き編

「先ず隗より始めよ」

これは、 中国の戦国時代に郭隗が、燕の王に、有能な賢者をどのようにしたら燕の国に招きいれることをできるだろうか、と問われた際に言った言葉とされています。

有能な賢者を招きたければ、まずは凡庸な私を重く用いれば、自分よりもすぐれた人物が噂を聞きつけて自然に集まってくる、と答えたということでした。大事業を行うには、まずは身近な、簡単なことから始めよ、ということになります。

「先ず、インクリメンタルPDより始めよ」

インクリメンタルPDとは?

インクリメンタルPDについて

インクリメンタル-PD(腹膜透析)とは?

を参照してください。

前置きの前置きになりますが

私自身は透析分野についてはシャント手術(シャント、人工血管、瘤切除、感染グラフト対処)、VAIVT(透視下、エコー下)、シャント管理(エコー)、血液透析回診、血液透析導入も腹膜透析導入以上に行っており、腹膜透析に偏っているということはありません。 腎生検も相当数行っており、腎代替療法が好きであるというわけでもありません(あくまでも透析を回避もしくは引き延ばすことが重要!)。

腹膜透析の現状

日本の腎代替療法の選択においては、腹膜透析を行える施設が少ないこともあり、透析=血液透析という認識がいまだに多数を占めています。血液透析を今行っている患者さんも、4割近くの方が、腹膜透析の存在すら知らないという事実もあります。腹膜透析が腎代替療法の9%を占めている米国などと比較すると日本では腹膜透析は2%程度しかありません。

日本の腹膜透析は海外に比べても成績が良いこともあり、必ずしも海外のデータをそのまま移植して考えることも難しいかと思います。

患者満足度や離職率の観点からは腹膜透析は優位に立っていることは日本のデータでも海外のデータでも明らかになっています。

昨年の診療報酬改定で腹膜透析、腎移植をもっと重視しようという流れが始まり、今後しばらくはこういった流れが続くものと予想されています。

しかし、多くの透析関係者にとって腹膜透析は鬼門であると思われます。

なぜ腹膜透析は普及しにくいか?その理由として

・腹膜透析は経験したことがない(からやりたくない)

・腹膜透析の診療は難しい(から血液透析の方が診療がしやすい・・・)

・水の調整が難しい(から血液透析の方が診療しやすい・・・)

・カテーテル挿入の手術はお腹の手術(シャント手術とちょっと違う)

・患者さん自身や家族が行うので教育指導しないといけない(から医療者にお任せの血液透析の方が診療しやすい・・・)

・ Encapsulating Peritoneal Sclerosis(EPS:被嚢性腹膜硬化症 )があってイメージが悪い

ということがあるかと思われます。

個人的な意見ではありますが、外来診療は血液透析の回診よりも格段に難しいと感じています。もちろん血液透析は月12~13回程度通院している一方で、腹膜透析の患者さんは月1~2回程度しか通院されていません(大変安定している場合1か月半おきもありえます)。腹膜透析診療の外来1回の重みが重くなるのは当然のことであります。

しかしながら、その難しさからかは分かりませんが、腹膜透析の診療した経験もなかったり、もしくは10人以下程度しか診療したことがないのに「血液透析の方が圧倒的によい」と言い切ってしまう医療者がいることも事実であるかと思います。

EPSについても、NEXT-PD研究から、現在の腹膜透析液の主流である中性液であれば発症率はかなり低い可能性が示唆されています。さらにインクリメンタルPDが有用である方は、

やはり、腹膜透析を最初から否定するべきではなく、腎臓を診る医療者であれば腎移植、血液・腹膜透析の全てを知った上で、患者さんと人生プランニングを相談しながら適切な方法や計画を検討すべきと思われます。

また、しつこいくらい繰り返しになりますが、私自身の診療が腹膜透析に偏っているわけでもないですし、腹膜透析のみ診療しているわけでもありません。

腎移植の紹介(当院では腎移植行っていないため)も行っていますし、血液透析導入もシャント手術も相当数行っています。腎生検も施設として70-80例/年(私自身も30例程/年)行っています。

手前味噌ですが、アクセス関連で人工血管分野で学会や学会誌に発表を行っています。

前置きが長くなりましたが

今回は、シリーズ編として①前置き編 ②実践編 に分けてまとめたいと思います。

内容的には、2019年3月2日土曜日に千葉県腹膜透析セミナーにて講演した内容の一部を改変しております。

また、腹膜透析の現状およびこれからの展望については、同日にあった埼玉医科大学総合診療内科教授中元秀友先生の講演を受けての内容も含んでいます。

また、各地域で腹膜透析導入(まだ行っていない)を検討しているご施設がありましたら、疑問質問等ありましたら、出来るだけお答えいたします(お時間かかるかもしれませんが)。

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