シャント手術の選択肢 ~こういう時どうする?~
血管が乏しい場合、どういった手術を選択することが良いのか?どれが正解というわけではないと思いますが、難しい場合にどういう選択肢があるか考えてみたいと思います。
60代男性 透析
両側(左も右も)上肢の血管は体表から視診で確認できる血管は乏しい。
同様に駆血しても明らかに血管は触れない。
そのため、左の上腕動脈からループして、尺側皮静脈につながる人工血管(ポリウレタン)による手術を過去に受けている。
しかし、静脈は中枢で閉塞してしまい、PTAをトライするも開通できない。静脈圧も上がっており、透析は再循環していた。
血管造影図
腋窩についても、超音波で検査したが、静脈は荒廃している。
ここでどういう手術法を選択しますか?
①右手にてシャント手術する
②両手の動脈表在化を行い、動脈→動脈で透析する
③下肢にシャントを手術する
④長期留置カテーテルの手術をする
①については右上肢についても血管が細く、上腕の尺側皮静脈も細いため、人工血管留置が選択肢。出来たとしても伴走静脈へのループになる
②については、まだ若いため、あまり選択したくないと思います
③下肢の自己血管でもよいか?ただ、透析中動きづらいのでつらい。
④長期留置カテーテルは予後が悪いので絶対に選択してはならない方法ですね。
原則からしますと、出来れば自己血管が望ましいですが、今回の方は既に人工血管の手術をされていた方なので、それを活かす方法が上位に入ってくるかと思います。
ちなみに左頸部の血管造影では
内頚静脈は良好だったため、選択肢⑤として人工血管(ePTFE)で、もともとのポリウレタングラフトから内頚静脈まで延長することとしました。
いずれにせよ上肢でのシャントは人工血管が必要なため、今ある人工血管を生かすという選択にしました。
手術は全身麻酔で、手術時間は1時間50分程度でした。
手術前の模式図
手術後
という血液の流れになりました。
内頚静脈側はGIV法(Graft in Vein法)にて吻合しています。
以下はその部分の写真になります。
流れは驚くほどスムーズで、ほとんどシャントスリルを感じません。
繰り返しになりますが、右で新たに人工血管で手術しても正解だと思いますし、下肢で自己血管で手術するのも正解だと思います。
感染の心配については、透析は前腕の人工血管を穿刺して行うので、感染した場合でも中枢まで波及する恐れは少ないかと思われます。穿刺前の消毒や清潔に保つなどは普段から心がけていく必要はあるかと思います、。
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