今回は、透析を行うためのアクセスの種類(血管手術)の選択についてです。
やはり
第一選択は自己血管によるシャント
であることには変わりありません。
- 自己血管によるシャントは何か所作成する候補があるでしょうか?
①上肢(腕):前腕→肘部→上腕(上腕動脈表在化+シャント)
上肢で大きく3か所のシャント作成部位があります(前腕は手首に近い部位、真ん中など複数個所で作成できますが、1とカウントしておきます)
タバチエは動脈静脈が隣り合っており作りやすかったため、昔は欲選択されていましたが、PTA(風船治療)が非常にやりにくいこと、前腕の手首で作成した場合と穿刺範囲に差がないため近年では選択されなくなっています(学会でも主流でなくなっており、アクセスの大家の春口先生も作っていないとのことでした)。
結果、上肢×2(左と右)=6か所
②下肢
大腿部(太もも):こちらは深いため1か所です。
大腿部×2(右と左)=2か所
(大腿部に関しては血管が深いことや手術に時間がかかること、手術難易度の問題から選択されない場合も多いかと思います。)
①+②=8か所
やはり、自己血管によるシャントは感染率も低く、返血にも困らないため、まず最初に考慮して、そして出来るだけ自己血管で出来ないか模索する必要があります。
- その次の候補は?人工血管?
その次は恐らく人工血管になるところが多いかと思います。
自己血管によるシャント作成部位8か所全て駄目であれば、人工血管を考慮する
ことが理想的と考えていますが、ここの辺りは「利き手と反対側がダメなら、人工血管にする。」という考え方もありますため、一概に正解はありません。
人工血管の問題点
・感染すると抜去する必要があり、更に皮膚欠損部位を生じる
・しばしば過剰血流の問題
・静脈流出路側が狭窄を来しやすく頻回のPTA(風船治療)が必要なことも
・時間経過とともに人工血管が劣化する
などの問題点があります。
感染に関しては、清潔に保ったり、同時期に集中して同じ部位を穿刺しない、穿刺時の消毒や清潔操作を気を付けることで大きく防ぐことができますが、患者さん側だけではなく、穿刺側も相当気を付ける必要があると考えられるため、一概に全てを防ぐことは出来ないと考えられます。
- 動脈表在化
動脈表在化は基本的には心機能が低下している、拡張障害がある、重症の弁膜症がある場合に適応があるかと思われます。
穿刺が多くなればなるほど内膜欠損を起こしていくため、穿刺位置を出来るだけ広範囲に、変更する必要があると思われます(毎回でもいいくらいです)。
動脈表在化については少し詳しく
にて説明しておりますのでご参照ください。JCHO千葉病院での開存率のデータも掲載しております。
やはり返血血管の方が詰まったりなど問題となるため、一概に一律に人工血管と比較できる訳ではありません。
- 長期留置カテーテル
長期留置カテーテルは言わば「最後の手段」として認識されています。
最大の問題点
・感染
・閉塞
があるためです。ADLが良い方では易々と選択すべきではない方法です。長期開存の成績も良いとは言えない方法になります。
千葉病院では永久留置カテーテルの挿入は年間僅か1件あるかないかです。逆に抜去は他院から紹介になった患者さんで年間6件程度行っています。私が千葉病院に来てからの2年間でも挿入は僅か1件程度だったと記憶しています。
もはや永久留置カテーテルはエコーが使える現代においては無用の産物になっていると言っても過言ではありません。
上記から、それぞれのメリットを理解して選択していただく必要があると思われます。
やはり人工血管は後にも先にも感染がネックになります。
必ずしも「利き手に自己血管シャント」が悪いことではないといことを忘れないでください。
今回は以上になります。お読みいただきありがとうとざいました。
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