乳酸菌っていったい何?

今回は、純粋に乳酸菌などの腸内細菌についてまとめたいと思います。今回は、腎臓とは直接的には関係していない内容になりますが、何かとTVCMでも話題であるため取り上げない訳にはいかないと考えるようになりました。

きっかけは単なる「そもそもビフィズス菌乳酸菌って違うの?」という疑問が起こり、調べていくうちに頭が混乱してしまった、ということでした。

今でも私の中で恐らく多少混乱していますが、プラズマ乳酸菌というまた新たな菌!?の出現もあり、それらについての意見も交えております。

前回の「腸内細菌と腎臓①~④」である程度のお話はできていると仮定しています。今回は、雑談レベルで見ていただければ幸いです。

ビフィズス菌と乳酸菌の違いは?

そもそも、ビフィズス菌と乳酸菌はどう違うのかということを疑問に思った時点で、もはやマニアの世界なのかと思われてしまいそうです。

ただ、ある程度分類して覚えておかないと、いざスーパーマーケットに行ったときに、テレビCMの言われるがままに購入してしまうということになりかねません。

以下が違いのまとめ表になります。

以下やや専門的な分類まで踏み込むと、腸内細菌の9割以上は4つの門に分類されます。

アクチノバクテリア門:ほとんどがビフィズス菌で構成。赤ちゃんのお腹の中。

バクテロイデス門:健常人で一番優勢な門。

ファーミキューテス門:乳酸菌のグループが含まれる。その他CD菌もこの中に。

プロテオバクテリア門:大腸菌や食中毒の原因菌(サルモネラ、キャンピロなど)が入り、一般的に悪玉菌と分類。

まとめると、ビフィズス菌と乳酸菌は遺伝学的に全く違う菌となるため、異なるものであると認識する必要があります。

そして乳酸菌はざっくり、お腹の中で主に乳酸を作る菌と考えた方が理解しやすいかと思います。

ビフィズス菌の特徴

ビフィズス菌は乳酸菌と違って、酢酸(いわゆるお酢)を作る性質があります。

そうするとお酢をたくさん飲めばいいのか!となってしまうかもしれませんが、酢をたくさんのんでも、腸に酢のまま行き着くわけではありません。

ビフィズス菌が腸内で作ったお酢は

①殺菌作用があると考えられている(悪玉菌の繁殖抑制)

②腸の上皮を頑丈にする作用があると考えられている

②の腸の上皮を頑丈にするというお話は腸内環境と腎臓②でも扱った内容になります。腸内環境が悪化すると、腸の細胞同士の間が広がり、悪玉菌が体内に侵入しやすくなるという研究考察です。

マウスを使った研究では、ビフィズス菌BB536がO-157に対する感染予防効果を示したとしています(腸の上皮が頑丈になることによりO157の侵入を防いだ?)(Fukuda et al, Nature,2011)。

ビフィズス菌の免疫応答

気になるビフィズス菌と免疫の影響については、新生児の腸内細菌叢と破傷風毒素ワクチン接種とそれに対するCD4陽性T細胞数をプロットしたところ、糞便中のビフィズス菌の占有率が高いほど、CD4カウントが増加する傾向にあったとする研究(Huda et al, Pediatrics,2014)がなされています。

→要するに、糞便中のビフィズス菌が多いほどワクチンに対するCD4陽性T細胞の数が増える傾向にある

→ビフィズス菌が多いほどワクチンの反応が良い可能性がある?という。

ことになるかもしれません。

ビフィズス菌の種類

ここでさらに混乱する小見出しですが、そのビフィズス菌もたくさんの種類があります。いちいち一つずつ覚えることは不可能です。

大きく分けてしまうと、

・ヒト(人間)由来のビフィズス菌

・ヒト以外の由来のビフィズス菌

があります。

ここからは個人的な見解になりますが、どうせ摂取するならヒト由来のビフィズス菌が良いのではないかと考えています。

動物由来のビフィズス菌がそもそも人間に腸にちゃんとなじむのかは分かっていません。

実はスーパーに売っているヨーグルトでも、ヒト由来のものを使ったり、人以外の動物由来のビフィズス菌を使っているものもあります。

ここではその商品名を挙げることはできませんが、スマホ片手に調べながら見てみるのもよいかと考えています。

ちなみに千葉病院では、栄養士の先生が検討を重ね、便秘が酷い場合には人由来のビフィズス菌のBB536を使用するようにしております。

インフルエンザ発症の予防効果については、おそらくいろいろな場面で聞いたことがあるかと思いますが、個人的な結論としてはおそらくどれも同じようなものであると考えています。

それぞれの菌(スーパーなどで売っている多くの製品)は比較しようもなく、それぞれの菌の研究にしてもどれも小規模であり、100%確かなのかと言われるとそうでもない状況です。

しかし、上記の内容を分かっていれば、自分なりに納得して選べるのではないかと思っています。

そして例えTVCMが何と言おうと

・どれも同じだから一つに絞ろう

・いや、これがよさそうだからこれにしよう

とかいう考え方もあってよいのではないかと考えます。

プラズマ乳酸菌とは?

プラズマ乳酸菌は、Lactococcus Lactis と呼ばれる菌で、乳酸菌に分類されます。なぜプラズマという名前が付けられたのかというと、プラズマサイトイド樹状細胞という免疫細胞を活性化することが分かったとされています。

樹状細胞は抗原提示細胞(体に入ってきたウイルスなどの異物を認識して、「こんな奴が体に入ってきたぞ!」と伝達する役割があります。そして、何にでも闘えるNK細胞を活性化する働きがあり、プラズマ乳酸菌が樹状細胞活性化を介して、なんでも闘う細胞を活性化させるというのです。

これにより、インフルエンザなどのウイルスにかかりにくいという効果が期待されているということになります。

結局何を選べばよいか?

プラズマ乳酸菌もR●もビフィズス菌も全てインフルエンザにかかりにくい?と言っているような気がする!と感じる方もいると思います。

結局、それぞれの比較はされておらず、また、どの乳酸菌やビフィズス菌もインフルエンザにかかりにくい?ということを謳っているため、結局は樹状細胞を刺激しようがしまいがということにもなりかねません。

私見にはなりますが研究費をかければかけるほど新しいことが分かってくるよ、ということになり、ほかの乳酸菌やビフィズス菌でも研究をすれば同じような作用が出てくる可能性も高いのではないか、と思っています。

個人的に重要なのは

継続的に同じものを取り続ける

ということかと考えており、コスト(値段が高かったら毎日飲むのは厳しい・・・)であったり、飲みやすさだったりが選ぶ決めてになるのかなと感じております。

少なくとも、乳酸菌は小腸で増えやすい、ビフィズス菌は大腸で増えやすいということから、それぞれの役割はあると考えて当然なので、そういった違いをある程度理解して、乳酸菌とビフィズス菌を両方摂取するという考えもできるはずです。

また、今回はプロバイオティクスについての内容になりますが、やはり腸の菌と腎臓④~治療方針~で取り上げさせていただいたように、ラクツロースなどのプレバイオティクスも重要です。

納得してこれだと思う菌と出会っていただければと思います(もちろんお腹が常に調子良い方は無理して摂取する必要はありません)。

また、繰り返しになりますが、選ぶときは「この菌は乳酸菌だから主に小腸・・・」「この菌はビフィズス菌だから大腸で、お酢が・・・」という風に意識してみると良いのかなと思います。

腎臓とは直接は関係ありませんでしたが、もちろん、腎臓が悪い方にとっては、腸内環境を整えることは重要と考えていますので、基礎知識としてざっくりと知っておいていただければと思います。

今回はこれにて。また今回の記事については適宜追記修正加えていこうと思います。

4 件のコメント

  • 非常に分かり易いご説明を戴き、納得できました。

    私も或るビフィズス菌については一番信頼していますが、それが上手くいかないのは、動かない要因(=運動不足)のせいも大きいのではないかと思ったりしています。

    何事も○○任せにするのではなく、きちんとした知識を持った上で、あとは本人次第という事ですね。
    少し気分が晴れました
    本当にありがとうございました。

    • メッセージありがとうございます!

      私個人の経験ですと、ヤク〇トを飲むと明らかに翌々日くらいの便の性質が変わってきます。

      プラセボといいまして、「効くぞ!」という強い思い込みもあるのかもしれませんが、、。

      やはり維持可能な低コストで永く持続するということが重要なのではないかと考えております。

      高い製品は途中で辞めてしまうことに繋がります。

      コメント誠にありがとうございました。

  • 嫁がパン酵母を飲むと良いと主張、
    日々、飲まされておるのですが・・・

    私見では、
    胃の胃酸で酵母が全滅しそうな気がするのですが、
    いかがでしょうか?

    人間の体調・体型・メンタルも?に
    大きな影響を与えるという腸内細菌に関しては、
    肛門側から注入する手法が、
    流行りそうな気がしております(^-^;

    • 伸様
      コメントありがとうございます!

      酵母については全くのノーマークでした。

      口から入った乳酸菌等の善玉菌は、胃酸と胆汁酸という2つのハードルをクリアしないといけません。

      パンに使われる酵母は Saccharmyces cereviciae という種類が多いとのことでしたが、そちらについては胃酸条件下では生存が確認されているようです。

      問題は、「定着するか?」にある気がしています。

      一般的に人間の糞便からは「酵母由来の菌はほとんど検出されない」ことになっています。

      ということは、

      ・人間の腸には酵母は生きていけるがなじまない(増殖できない)
      ・人間の腸では酵母は死んでしまう(生きていけない)

      の可能性があるのかと考えました(実際は調べていないのでわかりません)。酵母は乳酸菌の10倍近くのサイズがあるようです。人間の腸になじむ可能性のある酵母もあるようですので、パン酵母について一概に結論は出せませんが、乳酸菌やビフィズス菌はなじむ可能性の高いことが分かっているため、あえてそちらを選択する必要性は乏しいのかもしれません。

      処方薬にも酵母はありませんので・・・・。

      話は変わりますが、あるDrの書いたブログに、「腎不全患者にパンとコーヒーをお勧めしている」というようなことを平気で書いてあったのですが、腎不全の患者にパンは辞めておいた方がよいのです。
      パンは塩分が多く、また満腹感が少ないので、食べ過ぎてどうしても塩分過多になる傾向があります。栄養士の栄養指導でもお勧めしていません。

      今後も何か分かればお伝えいたします!

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