今回は少し砕けた表現になっています。どうぞお許しください。
透析は医師にとって鬼門である
「透析」と聞くと、医師全体の90%以上は「難しそう。出来れば診たくない・・・」と思うかもしれません。
所謂、透析自体が医師にとって鬼門なのかもしれません(もちろん透析を全く見ていない先生でも「そんなことはない!」という方もいると思いますのでご容赦ください)。
私も、血液内科をやっていた時代は透析を診たこともなく、シャントの仕組みすら全く分かっていませんでした。「シャントから普段の採血してはいけない!」という謎の言い伝えもありました。
もちろん今では毎日「透析」を診療していますし、非透析日に採血が必要な時はシャントから採血をすることもあります。
実は「腹膜透析」はその透析を診ている医師の中でも更に鬼門になっています。
なぜ「腹膜透析」は透析を診ている医師にとって鬼門なのでしょうか?
考えられる原因は
①腹膜透析カテーテル関連の手術をやったことがないから難しそう
②血液透析しか診たことがない(診たことがないものは分からない)
③綺麗なお家でないといけないという噂
④診たことがあっても診療が難しいと感じる
くらいでしょうか?
①腹膜透析関連手術
腹膜透析カテーテル挿入術の難易度は標準的な前腕のシャント手術と余り変わらない技術であると思います。手術手技はシャントの方が繊細と思います。
腹膜透析カテーテル挿入術の標準体型の手術時間は30-40分程度です(前腕内シャントも同程度の時間です)。麻酔も全身麻酔or腰椎麻酔となります。
以下もご参照ください。
PDカテーテル抜去についても同様です。
②血液透析しか診たことがないから血液透析が良い
おっしゃりたいことは非常に良く分かります。
もともと私自身も血液内科→腎臓内科+血液透析関連の手術→腹膜透析の順番で診療経験が進んでまいりました。
血液透析しか診たことがなかった時代は「腹膜透析なんて一生診ることはないのだろうな」と思っていました。
ただ、診療報酬改定や先の透析終了問題などで、腹膜透析が大きく注目を浴びている時代です。腹膜透析を希望して来院される患者さんも増えてきているのに、(腹膜透析は診たことがないから)「血液透析の方がいいですよ」と言ってしまってよいのかどうか疑問が残ります。
「血液透析の方が良いから納得がいかない!あんたの言っていることは妄言だ!」ということがありましたら、日本腹膜透析医学会や日本透析医学会の総会で、そのような発表を行っていただければと思います。
以前から何度も繰り返していますが、腎代替療法の選択は、それぞれのニーズや病状(腎臓や心臓、認知の状態)、体型など総合的に評価して合ったものがあるはずなので、一概にどれが正しい、正解とは限らないのです。
例えば、若くて活気のある大柄の糖尿病性腎症で透析になった方にどう考えても腹膜透析は向いていないでしょうし、高齢で心機能が非常に悪くて弁膜症もある方に血液透析は向かないでしょうし、長距離トラックの運転手で仕事を続けたい場合は腹膜透析と腎移植を最初に考慮することになり、血液透析は向かないでしょう。
③綺麗なお家でないといけないという噂
まず、家がピカピカの完全無欠のクリーンハウスである必要がないことは強調しておきます。果たしてその方は骨髄移植でもするのでしょうか?
今でも、腹膜透析をするには「家が綺麗じゃないといけませんよ」なんて説明をしている腎臓内科医がいるようです。
「先生、骨髄移植でもするんですか?!」。
私も血液内科時代に年間10~20例の骨髄移植を経験してきました。流石に、「退院後、帰る家は綺麗にしないといけません。退院前に掃除、エアコンのクリーニングなどなど〇×△≒」と言ってきました。
腹膜透析の環境として、家は人が健康的に住める環境であればいいはずです。
「それでもオレは家の綺麗さが気になる!」のであれば、腹膜透析を希望している患者さんに、患者さんの家の内部の写真でも撮ってきてもらえばよいと思います。
綺麗な家という何とも曖昧な主観基準で、患者さんの治療選択肢をなくしてしまうことはしてはいけないはずです。
先生!骨髄移植でもするんですか? それとも無顆粒球症なんですか?
④診療が難しい
腹膜透析は診療が難しいと思います。特に、溶質だけでなく、除水も意識しないといけない患者さんは血液透析とは比較にならないほど難しいです。
近年、透析導入の年齢が上昇しているので、心臓の疾患を抱えての透析導入も増えています。どうしても利尿不全は避けて通れません。
利尿不全は腹膜透析とっての鬼門でもあります。
今回記事のメインではないですが、その対応として、インクリメンタルPDによる導入やイコデキストリンを積極的に使用したり、ハイブリッドで行ったりすることが良いかと思います。
経験を積んでいくしか仕方なのない側面もあるので、積極的にセミナーに参加したり(私もセミナーに何度も参加しました)、行き詰ったときに、経験の豊かな先生方に相談することが良いかと思います。
まとめ
医師側の腹膜透析アレルギーはほかにもあるかと思いますが、一つずつ解決してもらい、患者さんの選択肢として自信をもって提示できるようになっていただければと考えています。
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