短編:動脈表在化の長所と短所

以前と比較して、透析患者さんや透析導入患者さんが高齢化してきており、それと共に心機能の悪い(拡張不全、収縮不全、弁膜症)などをお持ちの方が増えてきています。そのため、動脈から静脈に沢山の血液を流すシャントではなく、動脈表在化という心臓負荷のないバスキュラーアクセスの作成が増えてきています。

千葉病院でも千葉の他の病院でも最近は同様の傾向であるとのことでした。

ただ、もともと腎血流は1L/分程度あるため、smallシャント(流れの少ない:明確な基準はないが例えばFV:500-700程度)であれば余り心負荷にはならないと考えられます。

手術は簡単であるという術者側のメリットもあります(標準体型で25~40分くらい)。

動脈表在化が増えてきているが、メリットは恐らくただ一つであると筆者は考えている「余計な心負荷がないこと」であると考えています。

ではデメリットは?


デメリット

  • 穿刺が難しいことがある。同様に止血に時間がかかる。
  • 裏刺しすると仮性瘤の原因になる
  • 返血血管に苦労する
  • 感染すると治療(手術)が厄介
  • 穿刺の度に動脈の内膜がなくなっていくため、将来的に頻回穿刺部位が瘤化する恐れがある(動脈なので圧が高いのでシャントよりも瘤化しやすいと考えます)

デメリットに対しては

  • 穿刺困難→エコー使うor同じところを穿刺する→血管痛む
  • 裏刺し防止→エコーを使う
  • 返血血管→エコーを使う
  • 頻回穿刺を避ける(穿刺部位を必ず変更していく。同じところを穿刺しない)

表在化上腕動脈の3年開存率約75%~93%となっています。10年もつ方は6-7割程度でしょうか。動脈なのでPTA(風船治療)をすることはほぼないです。

上記は当院における動脈表在化の開存率のグラフです。横軸は月数です。縦軸は開存の%を表しています。シャントよりも良好な開存率を示しています、

表在化動脈が使えなくなる理由としては

  • 仮性瘤
  • 血栓閉塞
  • 感染

かなと思いますが、使えなくなった時の選択肢が、人工血管でバイパスするか、新たに透析をするための血管の手術(反対側の腕で動脈表在化するなど)をする他ないのが現状です。ちなみに動脈-動脈のバイパスはどうしてか開存率が低い印象です。ということで心機能が良好であれば出来るだけシャントを選択したほうが良いかと考えています。

とにもかくにも表在化動脈の長持ちの基本は同じところを刺さない!と考えています。

表在化動脈で仮性動脈瘤形成(裏刺しや側面穿刺)することが時々ありますが、きちっと対処すれば手術しなくて済むと考えます。動脈直接穿刺でも仮性瘤を形成することがあります。対処法については後日。

長期留置カテーテル選択は避けるべきであるため、表在化の重要性はその点からも増していくと思われます。

千葉市内はもとより千葉県内はアクセストラブルに対処できる病院が少ないので、こういった工夫や処置で長く使えればと思います。

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