血液透析や腹膜透析を行っていると大半の方は、二次正副甲状腺機能亢進症となります。
それに対する薬剤としてはビタミンD製剤と
カルシウム受容体作動薬として、レグパラ(シナカセルト)、オルケディア(エボカルセト)、パーサビブ(エテルカルセチド)があります。
2017年までは、主に経口内服薬のレグパラが使用されていましたが、2018年に注射製剤であるパーサビブと、レグパラの次の世代の薬剤としてオルケディアが発売されました。
当院においては基本的にレグパラを内服されていた透析患者さんはオルケディアかパーサビブに変更になっています。
ビタミンDも重要なお薬なのですが、今回は特に触れていませんのでご了承ください。
なぜ、レグパラから処方変更になっているのか?
レグパラは非常に良い薬ではありましたが、悪心や嘔吐の副作用が強く、両者合わせて出現率63%とされていました。
その他にも、何となくレグパラを内服すると「胃もたれが少しするような気がする」といった極軽い症状を訴えるかたもおられ、そういった方も含めると、もっと多くなるのかもしれません。患者さんによってはこの薬を飲むと何となく調子が悪くなるというようなことをおっしゃる方もおられました。
ただ、PTHという副甲状腺ホルモンを抑える薬剤として必要な薬で、レグパラが発売される以前は、副甲状腺にアルコールを注入するPEITや副甲状腺摘出するPTxという治療が多く行われていました。
レグパラが発売されてからはそういったことが必要になるかた自体が急激に減少し、今の腎臓内科の研修では経験が難しいごくごく稀なものになってしまいました。
ただ、嘔気嘔吐6割という非常に高い消化器症状の副作用出現率が問題でした。容量依存的(飲む量が増えるほど)に副作用が出現or強くなるといったこともありました。そのため、透析患者さんがサルコペニア(痩せる)原因になったりすることも時々起こっていました。
非常に軽微な「なんとなく言われてみればおかしいような気がする」レベルの、従来なら副作用として扱っていなかったくらいのものもあるかと思われます。
オルケディア(内服)とパーサビブ(注射)
2018年に発売された経口オルケディアと注射剤パーサビブは、レグパラの持っていた消化器症状(気持ち悪い)といった副作用が軽減された薬剤になります。
比較図を示します
両方のお薬共に消化器症状が大幅に軽減されています。
この新しい薬剤により、明らかに気持ち悪くなっていた方を含めて、「言われてみればそんな(ご飯がおいしくない)気がする」レベルの症状の方にも対処できる可能性があると考えられます。
副作用が少ないのは分かったが、副甲状腺機能亢進症を抑える薬としての性能はどうなのか?ということも見ておかないといけません
•シナカルセトvsエボカルセト→非劣性
(Kidney Int. 2018 Oct;94(4):818-825.)
•シナカルセトvsエテルカルセチド→非劣性
(JAMA. 2017;317(2):156-164. )
レグパラと比較しても、オルケディアもパーサビブもどちらも遜色ない性能を持っているということが示されています。
と、いうことは?
オルケディアとパーサビブは、性能はほぼ同じで、レグパラより副作用が少ない。
→ということは、今後は「レグパラではなく、オルケディアを飲んでいただくか、パーサビブを透析後に注射するかのどちらかでよい」という可能性が高いことになります。
あとは、パーサビブは注射剤で透析の時に一緒に注射してもらえるお薬なので、飲み忘れがないことや飲むお薬の数が一つ減るというとことはメリットかもしれません。
今の施設ではどうしてもレグパラを飲みたいという方以外はオルケディアもしくはパーサビブということになっています。
コメントを残す